缶コーヒーとマフラーとA―バクラと獏良―
『ゆきっこ』
〔買い物帰りの2人。荷物をベンチに置いて、バス停でバスを待っている。
バクラが寒そうなので自分のマフラーを巻いてあげる獏良。静かに雪が降ってくる。〕
「・・・寒いね・・・」 (手をこすり合わせながら)
「雪が降ってきやがったぜ」 (空を見上げて)
「あ、ホントだあ、わ〜い」 (嬉しそうに、無邪気に手を伸ばす)
「チッ、雪なんざ寒いだけで何の足しにもなりゃしねえ」
「そうかなあ?ボクは好きだけど・・・。だって、世界が真っ白に塗り潰されていくの、まるで別世界に連れて行ってくれるみたいじゃない?」
「どーでもいいけど早く帰ろーぜ。風邪ひいちまうぞ?ましてやテメエみてーなモヤシな体じゃな、ヒャハ」
「待ってよ、もうちょっとだけ・・・わあ〜。ねえ、積もるかなあ?」 (子供のように走り回る)
「・・・知るか。あ〜、寒。オレ様寒いの嫌いなんだよ!ましてや雪なんざ、初めて見た時は気色悪くてたまんなかったぜ!」
「ボクはちっちゃい頃から雪は好きだったよ。特に吹雪くくらいのがね。・・・全部、全部真っ白にしてくれるんだもん・・・何もかも・・・」
「・・・あ」 (掌に落ちた雪が熔けてなくなっている)
「・・・そして、翌朝にはすぐ熔けちゃう所もね・・・」
「・・・」 (雪は宿主に似ていると思う。全てが。)
「・・・クシュッ」
「オイオイ、風邪かぁ?ったくしょーがねーな」 (ごそごそと)
「?」 (小首を傾げて)
「・・・飲みかけだけどよ、ちっとはあったまっだろ。」 (缶コーヒーを差し出す)
「え、でもこれほとんど飲んでないんじゃ・・・」
「オレ様はお子様の宿主サマとは違ってブラックが好きだからな。それは間違って甘い奴買っちまったからテメエにやるよ。」
(初めから分かって買っている。宿主が寒そうなので買ってしまった。素直には言えないけれど。)
「・・・ありがとう!バクラ!」 (満面の笑みで)
「か、勘違いすんなよ!テメエが風邪ひいたらオレ様が困るからな!宿主サマには健康で居てくれなきゃなあ!」 (照れ隠し)
「うん、気をつけるよ」 (無邪気に微笑む)
「・・・その代わり、帰ったら存分にあっためて貰うぜ?」 (抱き寄せる)
「? うん」 (変わらず無邪気に)
「・・・テメ、すげえ冷てえじゃねーか」 (抱き寄せた宿主の体が冷え切っているので、抱き締める腕に力を込める。)
「・・・あったかい」 (獏良、嬉しそうに)
「・・・」 (それを見たバクラ、胸がきりきり。)
(オレ様の方が不確かな存在なのに、こいつの方こそ明日にでも融けそうな雪みたいだ。
真っ白な髪、真っ白な肌、真っ白な心・・・
染み一つなく汚れなく、そして芯は凍えるように寒く冷え切って、全てのモノを凍らせる。
全ての音を消してオレ様の中に降り積もり、いつの間にか全てが侵蝕されていやがる。
オレ様の方が寄生虫だってのに・・・
なのに、雪は、朝には熔けて、跡形もなく・・・)
「バクラ?」
(どうせ融ける酸素と水素の凝固した結晶なら、オレ様が全部融かしてやる。
だから、オレ様に黙って勝手に融けたりしやがったらショーチしねーぞ。)
(そうして獏良の唇に自分の唇を重ねるバクラ)
続きは書くかも、書かないかも?