白堊編
第1話

The Beginning of the End

<粗筋>遊戯に千年眼を渡し、獏良の心の部屋へ帰ってきたバクラを出迎えたのは、全裸の宿主だった。積極的にバクラに迫る獏良の行為が寂しさゆえだと気付いたバクラに、獏良は「置いていくならボクを殺して」と頼む。一度は躊躇うバクラだったが、気絶した獏良の漏らした「置いていかないで」と言う言葉に彼の真意を知り、どうしても彼を殺す事が出来ない。そしてバクラは一人ひっそりと心の部屋を去るのだった。
<感想>性描写が初期に比べてこなれて来ているとは思いますが、相変らず読み返すと恥ずかしい・・・(笑)。たまにまだ中途半端な一人称が交じるのがいただけないですが、獏良君とバクラのヒリヒリした関係が良い。
第2話

The Abandoned

<粗筋>童実野美術館から飛び出した獏良は、一人彷徨っていた所をまだエジプトに帰っていなかったマリクと再会する。マリクの泊まっているホテルに赴いた獏良は、お互いの寂しさと喪失感を埋める為、マリクを性行為へと誘う。だが、互いに違う相手を見つつセックスする事の虚しさに気付いたマリクは獏良の誘いを断り、自分の中に眠っていた闇人格が居なくなってからの感情を吐き出す。更に彼は、獏良にも幸せになって欲しいと告げる。その言葉にほのかな喜びとマリクへの愛しさを覚えながらも、獏良は拭いきれない絶望が自分を変化させて行っている事に気付いていた・・・。
<感想>お互いに「置いて行かれた」表2人の同調と対比を描いた作品。感情を率直に表しもがきながらも立ち直ろうとしているマリクと、感情を抑制しながら徐々に狂い始めている獏良君。2人の対比が面白いです。ここは原作がまだ進行中の時に書いたのでこう言う流れに成ったのですが、原作を最後まで読んでから考えると、全ての戦いが終わってファラオの魂を冥界に送る為エジプトに行った時に、フェリーの中で交わされた会話でも良かった気がします。城之内や表遊戯がファラオの魂との別離を惜しんでいる間にも、マリクと獏良は別の想いで悲しみを語り合っていたと・・・。
第3話

PARADOX

<粗筋>遂にアテムの魂が冥界へと帰るその瞬間、獏良は恐ろしい言葉を口にする。「ボクのシナリオ通り動いてくれて有り難う遊戯くん」そして冥界の扉の向こう側から、鎖に繋がれたバクラが現れる。そして獏良は驚く一同に恐ろしい真実を語り始める。全ては獏良のシナリオ通りに進行していたのだ。その理由を問われた獏良は、「真実を見る勇気はある?」と逆に遊戯等に問い掛ける。返ってきた肯定の答えに対し、獏良は真実を見せると言う。そして彼の不思議な力によって、地下神殿に集ったこの戦いの重要参考人達は、過去のヴィジョンを目にする事になるのだった・・・。
<感想>順番に読み返してたら突然文体が違う!のでビックリしました。確かに第2話との間には約1年半以上もの時間が開いていますが、余りにも文体が違うので驚愕!!!何処が違うと言うと、何よりも文章が一行一行が長くなり、やや論文めいた硬い口調になっている所です。獏良君の言っている事なんて完全に論文。ちょっと余りにも硬すぎてどうかと思いましたが、心理描写重視の現世編(特に黒曜編)に比べ、歴史的な話や伏線を使った壮大な話を描こうとした古代編の違いが浮き彫りになってます。と言うか段々「同人らしい話を書こう」と言うスタンスから、「いやもうオリジナルだから」と言う変化により、自分の元の文体に戻ったのだと思います。でもこれじゃ完全に論文ですね。内容的にも。
第4話

砂漠の獣 オアシスの月

<粗筋>3000年前の古代エジプト。盗賊王バクラは、かつて自分の村を滅ぼした憎き仇、アクナディンの娘・リウトを攫ってきた。彼女を犯し、復讐しようと思ったのだ。だが、まだ幼く華奢で可憐な口の利けない少女を、バクラは次第に大事に思うようになってしまう。だが、リウトは強姦され真実を知ったショックで食事を拒否し、衰弱していってしまう。リウトを死なせたくないバクラは意を決し彼女を宮殿へ戻そうとするが、彼の優しさを感じ取ったリウトはバクラと共に生きる事を選択する。
<粗筋>お気に入りの作品です。リウトが犯されるシーンも、生々しさより綺麗な描き方をしているなーと思いました。しかしリウトがバクラを好きになる経緯があまり良く分かりませんね(笑)。リウトは人の心を読めるので、バクラの中に芽生えた自分への愛情を感じて彼と一緒に居たいと思ったのかも知れません。彼女にとってはここまで率直に自分を愛してくれる人に出会ったのは産まれて初めてだったのでしょうから。
第5話

帰る場所

<粗筋>リウトとの束の間の幸福な生活を送っていたバクラだったが、念願の憎き仇・先王アクナムカノンの墓の見取り図を手に入れ、遂に本格的な復讐に乗り出す事を決意する。だがその前にリウトを危険から遠ざけようと、地下神殿を出てリウトを連れ旅に出るのだった。その頃アクナディンは娘を取り戻す為、謎の男に捜索を依頼していた・・・。
<感想>スランプで上手く書けていないと思っていた作品でしたが、読み返してみると普通に良く書けてる方じゃないかと思いました。バクラのファラオへの憎悪がひしひしと感じられます。
第6話

Fiend and Ogre

<粗筋>リウトと旅に出たバクラは、途中でリウトの為に市場に立ち寄る。だが、そこで2人はアクナディンがリウトを連れ戻すよう依頼した「闇の請負人」・セクマに遭遇してしまう。戦闘になるバクラとセクマ。互いに「カー」を持つ者同士の熾烈な戦いが繰り広げられるが、やはりディアバウンドを持つバクラの方が上手だった。しかし、セクマはリウトを人質に取りバクラに揺さぶりをかける。改めてリウトの存在を突きつけられ動揺したバクラは、誤ってセクマもろともリウトを崖から落としてしまう・・・。
<感想>現世編の重苦しい感じが無く、普通にファンタジー小説のように楽しめました。作者の私が(笑)。バクラとセクマの戦闘シーンや、市場の描写等もファンタジー小説っぽくて楽しい。バクラのギャンブル好きで賭け事に強い陽気な性格が良く出ててとてもかっこ良いです。セクマも不気味だけど何処か可愛らしい感じが出てて良い。やっぱりバクラと闇マは私の中ではこう言う関係(戦友、または好敵手)の方がしっくり来ます。
第7話

最果ての街

<粗筋>崖から落ちたセクマとリウトは何故か無傷だった。セクマはバクラのカーに興味を示すも、そのままバクラの手から逃れる事に成功する。再び旅の途についたバクラとリウトは、砂漠地帯で行き倒れている女性に出会う。キサラと名乗るその女性は、リウトを見て自分の伯母の娘ではないかと尋ねるが、母の記憶が無いリウトは答える事ができない。首都ワセトへと向かったキサラと別れ、バクラとリウトは遂に目的の町へと辿り着いた。そこで2人はセクマに瓜二つの男娼に出逢う。彼は何故かセクマの存在を知ると恐怖に怯え、その場から立ち去った。バクラをつけて来ていてその様子を陰から見ていたセクマは、宿へと戻った男娼・バスタに会いに行く。セクマを見たバスタは逃げ出すが、セクマに追いつかれ滅茶苦茶に犯される。実は2人は生き別れた実の双子の兄弟だったのだ。セクマは彼等の生家であるイシュタール家を滅ぼし、バスタを殺すと宣言する。
<感想>キサラが登場した場面も好きですが、特にセクバスがとても愛しい。マリクは前世でも同じような事態に陥ってますが、それが酷く愛しいです。セクマとバクラが出会い、バクラとバスタが出会い、それがセクマとバスタを引き合わせると言う偶然にしては出来すぎているような流れが自分的に気に入っています。あと、キサラの台詞がイチイチ意味深なのと、原作を隅々まで読んでるとここを使ったのかとか分かって面白いと思う回です。
第8話

<粗筋>かつて親交があり、リウトを預かって貰うよう頼んでいた宿屋の女主人・テナンと再会したバクラは、リウトとの別れに踏み切れないで居た。そんなバクラは、リウトに自分の過去を語りだす。それは15年前。別名盗賊村と呼ばれていたクル・エルナ村に、村民を千年アイテム製作の生贄にする為、王弟アクナディンの軍勢が攻め入って来た。バクラは目の前で家族や知人を殺され、またまだ幼い妹が生きたまま溶解炉に投げ入れられるのを見つつ何も出来ずにただ一人生き残ってしまう。発狂寸前だったバクラの前に、千年アイテムが作られた「冥界の石盤」に封印されていたゾーク・ネクロファデスが現れる。ゾークはバクラに自分の力の一部を授け、自分を復活させるよう促す。バクラは国家に、延いては世界に復讐する為に、ゾークと契約しディアバウンドを手に入れるのだった。
<感想>ここまで読み返してきて一回も泣かなかったと言うのに、ここに来て遂に涙腺が・・・。何かとてつもなく悲惨で辛い話です。私は当時この話をアテムや遊戯が好きな人にこそ読んで欲しいと思っていました。
第9話

The End of the Beginning 

<粗筋>セクマによって連れ去られたバスタは、その手から逃れナイルに身を投げる。翌朝ナイルにやって来たバクラとリウトは河畔に打ち上げられたバスタと再会する。テナンによって救われたバスタは、バクラに自らの事を話し、命を賭けてもセクマを止めれば良いだけだと言われ動揺する。そしてバクラはその夜リウトの元を去る決意をしていた。その不思議な力でバクラがもう帰って来ないかも知れない事を予知しながらもバクラを止められないリウトを置いて、バクラは一人部屋を去って行く。
<感想>バクラとリウトがラブラブな事にちょっと気恥ずかしさを覚えますが、こう言うのもありかなー。バスタがセクマと別れる時の描写にちょっと無理があるような気がしますが、この4人、皆愛しいですねぇ・・・。
第10話

ゆびきり

<粗筋>ワセトへ向かうセクマは、昔の夢を見ていた。まだセクマとバスタが一緒に暮らしていた幸福な子供時代の夢を。人懐っこく皆に愛されるバスタの陰に隠れ、いつも孤独を噛み締めていたセクマは、兄を尋常ではないほど愛していた。バスタを盗られたと思えば、従兄弟に当たるマハードを殺そうとする事も厭わないような子供だった。そんなセクマを疎んじる異常に厳格な双子の父は、遂にセクマをバスタと引き離す事を決める。悲しみに沈む双子は、2人だけの秘密の場所である柘榴の巨木の中にある空洞で、「永遠に一緒に居る事を誓います」と指切りをするのだった。
<感想>セクマが余りにも愛しすぎてどうしようかと思う作品。何かこの無器用さを人事とは思えません。でも、実際私の幼少期は親の愛情に包まれていたのでバスタに近いのかも知れないけれど・・・。実は私は一人っ子なので、兄弟間の確執とかは友達の話を聞いたりして作ったのですが、無器用さではセクマクラスかもしれない。闇マ表マが結構そこまで量書けなかったので、その分ここで2人の関係をじっくり書いたような物です。勿論他者である双子と自己であるマリク達では全然違いますが。
第11話

チェンジリング

<粗筋>父により引き離されたセクマとバスタだったが、どうしても兄に会いたいセクマはこっそり別荘を抜け出し本家へと向かう。そこでバスタに再会したセクマは兄への欲情を押さえられずその躰を弄ってしまうが、その様子を父に見られてしまう。再び引き離され監禁された双子は、どちらかが「禍の子」として葬り去られる儀式の日を迎えた。双子がそれぞれ選択した壺に入ったウシャブティの内、夜明けまでに水に沈んだ方を選んだ側が殺されるのだ。双子は姉・アイシスの手引きもあり逃げようとするが、それをも父に阻まれ、逃げ場を失って神殿内へと入り込んでしまう。そこでウシャブティを見た2人は、バスタの選んだ方が沈んでいるのを目撃する。バスタが殺されると言う事実を受け入れられないセクマは、自分が身代わりになる為ウシャブティを入れ替えに神殿に戻る。しかし、そこには既にバスタが居た。バスタはセクマを身代わりに自分だけ助かろうとしていたのだ。兄の醜い本音を知り、ショックを受けるセクマ。その上そこにやって来た父に、バスタはウシャブティを入れ替えて自分だけ助かろうとしていたのはセクマだと嘘をつく。殺されそうになったセクマは憎悪に満ちた視線をバスタに送り、「必ずお前を殺しに戻ってくる」と宣告する。結局セクマは逃げる途中で崖から落ち生死は不明になったが、バスタは絶望的な罪悪感に苛まされながら生きる事になったのだった・・・。
<感想>セクマが可哀相でまた涙腺が・・・。でもある意味バスタも可哀相です。バスタのエゴイズムが逆にいとおしい。
第12話

レクイエム

<粗筋>バクラの死を予感したリウトは、セクマを止めようとするバスタと共にワセトへと向かう。しかし彼女がワセトへ到着した時は既に時遅く、若きファラオ・アテムや神官団と戦っていたバクラは瀕死の重傷を負っていた。言葉を取り戻し自分の名を呼ぶリウトの目の前で事切れるバクラ。バクラの死を目の当たりにし、遂に覚醒してしまったリウトは、父であるアクナディンに残りの千年アイテムを冥界の石盤に収め、バクラの願い通り邪神ゾークを蘇らせる事を命じる。リウトの命に逆らえないアクナディンは、リウトの時間を止める能力によって体の自由を奪われた神官達から千年アイテムを奪い、ゾークを復活させる。ところが蘇ったゾークはリウトに跪き、彼女を「我が主」と呼ぶ。ゾークの口から語られる恐ろしい真実。実はリウトこそがゾークを復活させる最後の鍵であり、ゾークをこの世に生み出し人類に文明を与えた「白き龍の一族」最期にして最大の力を持つ巫女王だったのだ。ゾークに唆され、冥界の扉からバクラの魂を呼び戻し千年輪に閉じ込めるリウト。彼女は愛するバクラの亡骸を葬り彼を生き返らせる方法を探る為、白き龍の姿になって飛び立つ。奇しくも天は日蝕により闇に覆われようとしていた。ゾークはリウトの命を受け、世界を滅ぼそうとする。そしてそのゾークのしもべとなったアクナディンは、更に恐ろしい真実をアテム等に告げる。千年アイテムはこの世に生み出された時に人間を滅ぼすよう仕組まれていた「パンドラの箱」であったと。そして神を復活させてしまった人間達に残されたのは滅びの運命のみだと告げる。
<感想>聖書の文句を冒頭に持ってきたりして、私が凄い力を入れて書いていたのが分かる回です。私の好きな既製作品は「壮大」「伏線」「歴史」「愛憎劇」「オカルト」「悲劇」が絡んで来ているのが多いので、私もそれを目指して書きました。リウト覚醒とそれに続くとんでも真実の一端でも、読者の方々が「ビックリ」「驚嘆」してくれる事を願って書いてました。私にとっては張り巡らせた伏線を解消できた最初の作品です(笑)。
第13

GODDESSES

<粗筋>ゾークによって殺されそうになったアテムを救ったのは、謎の仮面の男・ハサンだった。彼こそは「石盤の精霊」として王の一族を永きに渡り見守ってきた存在だった。そしてハサンはアテムがかつて白き龍の一族の巫女に力を授けられ、上下エジプト統一した伝説の王ナルメルの生まれ変わりであると告げる。人間を救う為、ハサンは唯一ゾークを倒せる精霊ホルアクティを復活させる呪文を知ろうと、「時の墓場」と呼ばれる白き龍の一族の記憶の貯蔵庫に向かう。しかしそこには、母・マアトの亡霊に愛する男を蘇らせる方法を知る手立てを教えられたリウトもやって来ていた。対峙する2人だったが、リウトの圧倒的な力にハサンは消滅させられそうになる。だがその時ハサンの姉であり最上級精霊となったホルアクティが助けに入った。リウトに対抗する力を持つホルアクティはハサンに呪文を教え、「時の墓場」から逃がす。全てを知ったリウトはホルアクティを葬ろうとするが、その瞬間アテムの口からホルアクティ復活の呪文が紡ぎ出されてしまう・・・。
<感想>オリジナルファンタジー満載の作品。アテムが実在の(?)エジプト王ナルメルの生まれ変わりと言う事で三幻神の名を知っている説明をし、尚且つ話を一応歴史ファンタジーにしています。もしこれが同人小説でなかったなら、まず間違いなくナルメル時代の過去の話も書かざるを得なかった筈。しかしそれをしなかった事で逆に纏まったと思える作品です。原作では何の関連性も無いホルアクティとハサンが実の姉弟であったとか、白き龍の一族が異星からやって来た事を臭わせるなど、遊戯王のネタを使いつつ完全にオリジナルファンタジーで書いてて楽しかったです。
第14話

パンドラの娘

<粗筋>セトに自らの罪深き運命を語りだすアクナディン。元々王位に就くのは側室の息子であるアクナムカノンではなく、正妃の息子として生まれたアクナディンの筈だった。だが、父王の側室への寵愛によりその座を奪われたアクナディンの母は、憎悪と絶望の中自死する。その母の憎悪を受け継いで育ったアクナディンは、兄の側近として使えながら、その憎しみを消し去れないでいた。そんな王国に他国の侵略の危機が迫り、アクナディンは古くから王国に伝わる「千年魔術書」の存在に着目する。その解読が出来る一族の存在を突き止めたアクナディンはその地に赴き、「白き龍の一族」と呼ばれるその一族の巫女と対面する。巫女は「千年魔術書」の恐ろしさをアクナディンに説き解読を拒否するが、アクナディンは偶然垣間見た巫女の美しさに理性を失い彼女を汚してしまう。汚された巫女・マアトは巫女としての資格を失い、アクナディンと共にワセトへとやって来る。アクナディンの側室となったマアトは「千年魔術書」を解読し、アクナディンに「千年アイテム」の製造方法を教える。そしてアクナディンはクル・エルナ村を滅ぼすのだった・・・。しかし創り出された「千年アイテム」によって国が救われた日、アクナディンは嬰児を出産し瀕死のマアトから恐ろしい真実を聞いてしまう。それは「千年魔術書」の封印が解けた時、邪神ゾークが復活し人間は滅びると言う物だった。そしてその最後の鍵である「巫女王」こそがマアトとアクナディンの間に生まれたこの赤ん坊なのだった。マアトは娘を「巫女王」にしまいと、命を賭して一族の力の源である「言葉」を封印する。しかしその封印は娘が「憎しみ」と言う感情を持った時解けてしまうとアクナディンに告げ、マアトは息絶える。愛する女との約束を果たす為、娘・リウトを養育したアクナディンだったが、それがやがて更なる悲劇を呼んでしまう・・・。その事実を知ったセトは驚愕するが、息子・セトをも愛しているアクナディンは、自らの死をもってして彼に闇の力を授ける。しかし、アテムを殺そうとしたセトを正気に戻したのは、リウトの従姉妹に当たる「白き龍の一族」の娘、キサラだった・・・。
<感想>自分でもかなりお気に入りの作品だったのですが、マリクもバクラも出て来ないので、正直同人小説としてはどうかなと思って居ました。しかし、意外に好きだと言ってくれる人がいたので嬉しかったです。この王宮の世継ぎ争いとか、人間でない巫女と人間の宰相の愛憎劇とか、あと千年アイテムに纏わる忌まわしい運命とか、そう言うネタが本当に書いていて書きがいがありました。アクナディンは原作自体は好きなキャラでは無いのですが、とても美味しいキャラ(笑)だと思ったので色々書いている内に、段々愛しくなってきました(笑)。個人的にマアトがずっとアクナディンを憎んでいたように見えて実は愛していたと言う事が分かるラストが好きです。しかし改めてこう言う話をもう一度オリジナルで書きたいと真剣に思います。でもある意味ここまで自分で気に入っている話はそうそう書けるのか・・・。
第15話

柘榴の木の下で

<粗筋>イシュタール家に戻ってきたバスタは、そこで父の亡骸と父を殺したセクマと再会する。セクマを止めようとし、戦闘になる2人。だが、やはり戦い慣れしたセクマの方が上手だった。遂にバスタの首に手をかけたセクマだったが、何故かどうしても止めを刺す事が出来ない。そんな2人の前に伯父ドゥアムテフが術者を率いて現れる。術者によって包囲され攻撃されたセクマを庇い、バスタは瀕死の重傷を負ってしまう。丁度その時、邪神ゾークの復活による衝撃で大地が揺れ、建物が崩壊を始める。その混乱の中、最愛の兄を殺す為だけに生きてきたセクマは、その兄の死を受け入れられず彼を背負って崩壊していく世界を歩き出す。ある一点を目指して。その場所は彼等が小さい頃一緒に遊び、彼等を育てたとも言える柘榴の巨木だった。確実に命の火が消えて行くバスタは、最後の力を振り絞ってセクマに告白する。自分もまた実の弟を本気で愛していたのだと。驚愕するセクマだったが、ようやく柘榴の木の元へ辿り着いた時にはバスタは事切れていた。慟哭するセクマ。だが、抜け殻のようになってしまった彼に、ホルアクティに敗れ影だけになったゾークが近付いて来る。そしてバスタを生き返らせる換わりに自分と契約するように唆すのだった。
<感想>書いた時は結構書きたいように書けなかったと不満が募ったものですが、これはこれで良いのではないかと思います。逆に言えばそれだけこの話は思う通りに書きたかった重要な場面だったのですね・・・。
第16話

天の書板

<粗筋>ゾークと契約を交わしたセクマは、バスタを生き返らせる事と引き換えに、王・アテムをセトから奪った千年錫杖で刺殺する。しかし、アテムは最後の力を振り絞り、ゾークを自らの魂と名と共に千年錘に封印する。その時彼等の前にハサンとアイシスが現れる。ハサンはセクマが王を殺し、アイシスが王を見殺しにした罪をイシュタール家に償わせるように宣告する。しかしそこへリウトが現れた。彼女はハサンに、バクラを復活させる為、砕け散った千年錘が再び組み上げられる時に戦いを再開すると宣告する。そして、セクマの魂もバスタの魂に寄生させて復活させる事を約束する。リウトと契約を交わし、セクマは自害する。そしてリウトもまた、姿を消すのだった・・。ハサンは残されたセトとアイシスに、来るべき戦いの日に向けて様々な使命を負わせる。そしてセトとアイシスは2人で協力し、国を再建するのだった。胸に秘密を共有しながら・・・。
<感想>様々な原作の設定を裏づけする為に色々考えた回です。アイシスの「全て知っていたのに救えなかった」と言う告白は本当はイシズに言わせようと思っていて出来なかった事でもあります。
第17話

全ては光の中へ

<粗筋>全ての真実を知った遊戯達は衝撃に打ちのめされる。しかし、更なる衝撃が彼等を待っていた。現れたシャーディー・・・かつてのハサンによって暴かれる獏良の本当の目的。それはかつて滅びた彼等「白き龍の一族」の故郷の惑星「イアルの野」と同じ事をこの惑星にする事・・・。バクラと永遠に一緒にいる為時を破壊し世界を滅亡させる事だった。動揺する遊戯にシャーディーは「王の剣」を渡す。それは千年パズルに封印されていた、唯一「白き龍の一族最期の巫女王」を殺す事が出来る剣だったのだ。友達を殺す事など出来ないと固辞する遊戯に、そうしなければ世界が滅ぶと迫るシャーディー。カウントダウンは既に終わりに近付いていた。躊躇う遊戯から剣を奪い、海馬は獏良を刺そうとするが、「王の器」として選ばれた遊戯にしか「王の剣」は使えない。だが、遊戯は懊悩しつつも結局獏良を殺す事はできなかった。そうして世界は光に包まれ、滅亡した。
<感想>最初はこの話は私なりの復讐でもあったのです。アテムにとって一番辛いのは、恐らく仲間・・・特に大事な「相棒」が苦しむ様。で、遊戯にとって一番辛いのは何か、と考えた時友達を殺さなければならなくなる事じゃないかと思いました。特に遊戯は何回もそう言う選択を原作中でしている訳で、だからこそ私は遊戯は獏良君を殺す事は出来ないんじゃないかと思ったのです。例え殺せたとしても後はもう苦難しか待っていない。友達を手に掛けた遊戯は決して自分を許せないでしょうし。だけど結局はそんな復讐より、獏良君の悲しい話になりました。遊戯が好きなキャラだったからこそ作った話でもあるのです。
第18話

WHITEOUT

<粗筋>全てが光に覆われた白い世界で、消滅寸前の獏良とバクラの魂は睦み合ってまどろんでいた。しかしバクラは獏良を救えなかった悔恨を胸に抱きながら・・・。その頃表マリクも自分の闇人格と再会していた。だが、このまま共に消滅を待つだけだと思った表マリクに、闇マリクは思いもかけない事を告げる。それは別離の宣告だった。動揺する表人格に、闇マリクは告げる。お前に生きて欲しいと・・・。彼の真意を知り、表マリクはこの世界を元に戻そうとする事を決意する。そして彼等は2度目の別離を・・・いや「一緒に生きる」事を選択する。そしてマリクは獏良達の元へ戻り獏良の説得を試みるが、完全に絶望に支配された獏良の耳には届かない。バクラの必死の呼びかけも虚しく、全ては白い光に包まれる。しかし、消滅寸前だった獏良の魂に呼びかける声が聞こえて来た。それは消滅した筈の闇マリクの声。彼はバクラの真意を獏良に告げる。その言葉に自分の本当の願いを取り戻した獏良は、「時の巻き戻し」を行い時間を世界の崩壊直前へと戻す。目覚めたバクラの前に獏良の姿はなかった。獏良は自らの魂を犠牲にしてバクラを救ったのだった。慟哭するバクラに、シャーディーは獏良の魂を取り戻せる可能性を告げる。そしてバクラは冥界の扉を開き、獏良の魂の変わりに自分の魂を差し出す事を決意するのだった。だが、更に獏良を苦しめまいと自分の記憶を消してくれとシャーディーに頼むバクラに、マリクは「このまま消えるなんて許さない」と詰め寄る。必ず帰って来い、と言うマリクの叫びを聞きながらバクラの魂は「無念の闇」へと堕ちて行った・・・。 
<感想>「LAST LIGHT」と対になる救済の物語。これは自己と他者の違いを認め合うと言うテーマだったつもりだったのが、今読み返すと自分の事しか考えていなかった獏良君が他者、つまりバクラの事を考えられるようになったとも取れるなと。良く考えると「殺してね」って凄い身勝手ですよね。でも獏良君の「もう疲れた」と言う台詞には妙にリアリティを感じます。
第19話

永遠

<粗筋>戦いが終わってから一年半後の春。エジプトに戻っていたマリクは自分の闇人格に手紙を書いていた。自分の近況、そして心境を切々と綴るマリク。そんな彼を見守るもう一人のマリクの存在を、確かにマリクも、そしてリシドも感じていたー・・・。その頃日本では、童実野高校の卒業式が行われていた。こっそり打ち上げを抜け出した獏良は、早咲きの桜並木を歩いていた。そこで彼は思いもかけない人物と再会する。それは、盗賊王バクラの体を取り戻した最愛のバクラだった。記憶を取り戻した獏良はバクラに駆け寄り、抱き合う2人。実は彼を救ったのはシャーディーだった。彼は無念の闇へと堕ちたバクラの魂に、千年アイテムがその役目を終える時に叶えてくれる最後の願いを渡しに来たのだった。それは何と「死者蘇生」。その力を受け取り蘇ったバクラに、獏良は共に生きる事を告げる。そして2人は桜の舞い散る中、いつまでも抱き合っていた―・・・
<感想>幸せになって欲しい、と言う願いから生まれたこの同人小説。皆が幸せになれる事を私は確信しています。それは遊戯達でさえ。暗い暗いエピソードから始まったけど、誰も不幸にならないラストこそ、私の目指したもの。甘いと言われようとも、これが私の望む「答え」です。「誰にも物語はあり、それは光の中に完結する物語だ」

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