異聞書
桜の森の満開の下 <粗筋>桜の森を根城にする盗賊は、ある日森に迷い込んできた貴族の娘を攫う。だが、その美しい娘は女として育てられた少年だった・・・。了と言う名のその少年と奇妙な同居生活を始める盗賊・バクラ。彼は次第に了に溺れていく。空虚な笑みを浮かべる了に本当の微笑みを取り戻そうと、バクラは都に了を連れて行く。そこで了の不幸な過去を知るバクラ。しかし愛し合うようになった彼等には追っ手が迫って来ていた。逃げる途中で了は流行り病に冒されてしまう。バクラは了を連れて桜の森へ帰るが、そこで遂に追っ手に見つかってしまい、追っ手からバクラを庇って了が倒れる。バクラは絶望の中追っ手を皆殺しにするが、もはや誰にも邪魔されない2人を取り巻くのは無数の桜の花弁だけであった・・・。

<感想>坂口安吾の小説を題材にした話で、今読んでも良く出来ていると思います。ですます調が普段私が書いている小説よりも情緒的に見えるのでそこが功を奏したのかも。当時構想しかなかった盗リウを意識していたようですが、徹底的な悲劇っぷりはむしろこちらの方が上かも知れません。獏良君の不幸さがここに極まれり的な感じです。しかし既にここで獏良君を少女にするか少年にするか迷っている段階で私の中で獏良君がいかに中性だったかが分かります。結局ここでは少年にし、「異端書」では少女にしたのですが、どちらもそれはそれで良かったと思っています。

すてねこ <粗筋>ある雨の日、獏良は段ボール箱に入れられた捨て猫を見つける。そのまだ幼い子猫を連れ帰った獏良だったが、湯船に入れた途端子猫は耳と尻尾を残したまま人間の少年になってしまった。獏良と寄生虫(?)である同居人バクラ、そしてマリクと名乗る子猫の奇妙な同居生活が始まるが、マリクは自分を捨てた「しゅじんかくさま」を忘れられないでいた。そんな時、自分が捨てた子猫を探しに来た「しゅじんかくさま」と獏良が遭遇してしまう。獏良のマンションにまでやって来た「しゅじんかくさま」だったが、マリクは彼を拒絶する。そして人知れず行方をくらませてしまうのだった。雨の中必死にマリクを探す3人だったが、遂に「しゅじんかくさま」は埠頭でマリクを見つける。そして彼に謝り彼を受け入れると告げる。その瞬間マリクは「しゅじんかくさま」と同じ姿に戻り、2人は抱き合うのだった・・・。
<感想>やっちまった感が否めません(後書と同じ感想)。これはこれで、絵本調として読んで下さいと言った感じ。原作はシカトの方向で・・・(汗)。私のダークな色彩の話が多い中、恐ろしいほどにゃんにゃんとした話で、いかにも同人らしく且つ当時の流行に乗った感じです(この話を書いた当時闇マ子猫化が同人界で異様に流行っていた)。本来の私の作品の雰囲気とは異なりますが、一応切な目と言うスタンスは貫いており、色々な作風に挑戦していたと言う事で・・・。でも当時私の中には本当にこう言う闇マも居た(笑)
異端王 <粗筋>凶悪犯だけを収容し、脱獄不可能と言われる難攻不落の要塞刑務所「アルカトラズ」に「盗賊王」の異名を持つ男が移送されてきた。その男・バクラは召喚獣「カー」ディアバウンドを使って脱獄を試みるが、同じ「カー」使いの殺人鬼・マリクと手錠で繋がれてしまい、行動を共にする事を余儀なくされる。お互いに罵り合いながらも意外なチームワークを見せ、互いの「カー」を使って脱獄に成功するバクラとマリク。二人の旅はまだまだ続く・・・。
<感想>バクラ(盗賊王)と闇マリクの仲良いんだか悪いんだか分からない珍道中を書きたくて作った話で、読んでてそこそこ面白かったです。物語自体はやはり後に書く「異端書」の古代編・盗賊王とセクマが闘う話の方が良く出来ていますが(この時はまだこなれていない感がある)、口もガラも悪い2人の応酬が面白い。本当はもっと長かった話なのですが、その内に原作の余りの悲惨さにこう言う明るい話(?)より、より悲壮さと破壊度が増した「新・異端王」とも呼べる別バージョンが生まれてしまったので結局お蔵入りしました。そっちも書いてませんが、書かなかった作品一覧に粗筋だけ出てます。いずれにせよ、「悪」の少年達が破滅に向かって楽しそうに突っ走る話が書きたかったのです。
福音書
愛していると言ってくれ <粗筋>表マリクと喧嘩をしてマンションを追い出された闇マリク。理由は闇マリクが場所も人目も気にせずいつでも主人格と性行為に及ぼうとするからだった。追い出された闇マは獏良達のマンションへやって来る。そこで獏良達は2人を仲直りさせようと、まずは闇マに主人格へのプレゼントを自分で稼いだ金で買わせようとする。その頃追い出した事を後悔し始めていた表マも同じ店で闇マへのプレゼントを買う。だが折角再開した2人は再び喧嘩別れをしてしまう。すったもんだの末、バクラ達の協力もあり結局2人は仲直りし、また仲良く暮らし始める。
<感想>これぞ同人小説!と言った感じの作品。恐らくもうこう言う話は書けないでしょう(笑)。闇マ表マ至上主義だった当時は、こう言う無器用で破天荒な2人のバカラブッぷりが愛しかったです。今と獏良君の性格全然違う!(笑)
夏祭り <粗筋>夏祭りに行ったマリク達4人。初めて行く日本の夏祭りに心躍りながら、ふと拭いきれない不安を感じる表マリク。それは闇マリクとの別離への不安だった。だが、今ここでこうして触れ合える事の幸福を噛み締める2人。バクラ達もまた、似たような切なさを感じていた。河原で花火をする4人。こうして夏の夜は更けて行った。
<感想>当初物凄く気に入っていない作品でした。キリリクだからこそ余計に納得がいかなかったのですが、意外に好きだと言う人が居たので自分で意外でした。私が気に入っていなかった最大の理由は、心理描写が自分的に無理矢理ぽかったからです。でも何はともあれ、好きだと言ってくれる人が居るならそれで良いのではないかと思いました。夏祭りの雰囲気自体は好きです。

PRESENT

<粗筋>誕生日の日、学校に行くのを渋る獏良。そんな獏良に自分なりのプレゼントをあげようと、放課後獏良を連れ出すバクラ。彼が連れて行ったのは夕日の綺麗な特等席だった。帰ってきた獏良達を待っていたのは戦場と化したキッチン。マリク達が獏良の為に料理を作ろうと奮闘していたのだった。その結果はともあれ、その事に素直に喜びを覚える獏良。彼は生まれてから一番の幸せな誕生日だったと幸福を噛み締める。それを見詰めるバクラ達もまた・・・。
<感想>何かしんみりして良い話だと思いました。私が凄く彼らの事が好きで、幸福を真摯に願っていた最盛期の時代の作品です。

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