一瞬闇マリクから逃れようとしたが、もう遅い。

表のマリクよりも数倍あるのでは無いかと言う力で腕を捩じ上げられ、獏良は痛みに顔をしかめた。

                    

「ああ・・・いいなあ・・・」

恍惚と闇のマリクは呟いて、舌で唇を濡らす。

 

そのまま服の上から股間をきつく鷲掴みにされ、獏良は思わず喘いだ。

 

「クク・・・やっぱり思った通り良い声してんな・・・もっと啼けよ・・・」

 

「っ・・・っあ・・・っ」

 

必死で束縛から逃れようとするのは逆効果にしかならない。

闇マリクの嗜虐心を助長するだけだ。

 

余った手でその白い長い髪を掴んで下に引いた。

反動で顔が反らされる。

その剥き出しになった喉から顎へ、舌を這わせる。

 

その間にも股間に与える刺激にも手を抜かない。

あえて服の上から擦られる感覚に、獏良は痙攣した。

 

「やっ・・・やめて・・・」

 

もがく獏良の顎を伝い、闇マリクの舌はその口内へと侵入を開始した。

髪から手を離し、顎を掴んで開かせた口の中へ自分の舌を滑り込ませた。

 

「ん・・・っ」

顎を掴まれている為、口を閉じる事も、舌を噛み切ってやる事も出来ない。

大きく開かされた口の端からつうと唾液が落ちる。

闇マリクの舌は歯の根から喉の奥までを蹂躙し、息が巧く出来なくて、獏良の青い瞳に涙の粒が浮いた。

 

舌を抜き取ると、満足そうに闇マリクはその後味を噛み締めるように何度も舌なめずりをした。

「クク・・・このまま・・・イかせてやろうか・・・」

 

「ひああっ・・・っ」

ぎゅううと右手で性器を、左手で首をきつく握られ、獏良は一瞬気が遠くなった。

 

目の前で獏良が辱められていても、マリクは何も出来なかった。

ただ、見ている事しか。

 

「ヤメロオオオ!」

闇が、震えた。

 

獏良がはっとしたように目を開いた。

一滴の涙の雫がその海の底の様な瞳からぽたりと落ちる。

 

「おやおや・・・」

聞きなれた声に、闇マリクは目を細めた。

 

「宿主に・・・手ぇ出すんじゃねえ!!」

 

「バク・・・ラ・・・」

獏良が掠れた声でその名を呼ぶ。

 

「ククク・・・ここまで来れるとは、全く今日は妙な珍客が多い日だなあ、ええ?これはこれは涙ぐましいねえ・・・死に損ないが。」

闇マリクは楽しそうに言った。

 

バクラの息は荒い。

服は辛うじて身には纏っているが、全身傷だらけだ。

表のマリク程ではないが、かなり、酷い。

 

その状態で全てを察した表のマリクは、思わず顔を逸らした。

あのバクラが・・・好きにされている様子など、想像したくない。

勿論全て自分が蒔いた種だが・・・。

 

バクラは悪鬼のような表情で、闇マリクと、その手で弄ばれている自分の宿主を見た。

 

びりびりとした電気のような怒りが空間を通じて伝わってくるようだ。

あの時と同じ・・・表マリクが獏良を犯した時と同じ様に、バクラは凄まじい勢いで怒り狂っていた。

 

「・・・その手を離せ、下種野郎。」

バクラは静かに言った。

闇がぴりぴりと感電する。

 

だが闇マリクにとってここは彼の生家で住処だ。

余裕のまま口元にいやらしい笑みを浮かべた。

 

「ククク・・・残念だったなあ。お前が死ぬ気で守った大事な大事な宿主様は、一番触れられたくない男の腕の中だ。

骨折り損だったなあ。こちらはまあ・・・存分楽しめたがね・・・」

 

そう言ってまた舌なめずりをする。

本当に舌を動かすのが好きな男だ、と獏良は朦朧としながら思った。

 

「黙れ・・・宿主を放せっつってるだろ!!変態野郎が!!」

 

「クク・・・やだねえ。折角手に入ったんだ・・・楽しませて貰うよ。」

そう言って闇マリクはバクラの方へ向き直り、獏良も腕をひっぱって引き寄せ、自分の前に立たせた。

そして、シャツを捲りあげ、右手で薄い胸を弄った。

 

「あ・・・っ」

腋から指を這わせ、左胸の乳首を摘む。

白い肌は上気してあっという間に艶かしい桜色に染まり、汗が浮かぶ。

もう片方の手は腰のベルトを外し、無防備な脚の間へとするりと入り込む。

 

「うああっ」

先程までで散々弄ばれていた部分に直接の刺激が加わり、獏良は耐え切れなくなって悲鳴をあげた。

 

「ほらほらぁ、テメエの宿主様も気持ち良さがってるじゃねえか。

邪魔するのは野暮ってモンだろ?それともあれかあ・・・?

貴様ももう一回イかせて欲しいのか・・・?」

 

嘲笑う闇マリクに、バクラは歯が砕けるんじゃないかと言う程歯を噛み締めた。

「てめえ・・・それ以上宿主に触んじゃねえ!!殺すぞ!!」

 

飛び掛ろうとしたバクラは、次の瞬間部屋の壁に叩きつけられた。

 

「あははははあああ!!無駄なんだよ!さっきのでかなり体力も消耗してるだろ!?

しかもテメエの力の源である千年リングはオレが持ってるんだからなあ!」

 

闇マリクは勝ち誇って哄笑した。

 

「ク・・・」

それでもなお立ち上がって向かってこようとするバクラに、闇マリクは舌打ちした。

 

「テメエはそこで大事な宿主様がめちゃくちゃにされんのを黙って見てればいいんだよ!」

 

さっきバクラに逃げられる際に刺された脇腹がじくじく痛む。

闇マリクはイライラした。

 

なぜこんなにもイラついているのか、自分でも分かってはいなかった。

 

「宿主を・・・放せ!!クソガキが!!ぶっ殺してやる!!」

「やってみなあ!!」

 

闇マリクは千年ロッドをバクラに向かって振りかざした。

闇がぐにゃりと形を変える。

 

そしてそれは無数の槍の形になった。

 

どどどっ

 

一気に闇の槍がバクラを襲う。

逃げようと身を捩ったが、一本が脚に刺さると、身動きが出来なくなる。

 

腕、脚、肩、全て致命傷を避けて槍はバクラを壁に釘付けにした。

 

「うあああああああ!!!!」

 

盛大な悲鳴が上がる。

「バクラ・・・っ」

獏良の掠れた悲鳴が、表のマリクの悲鳴を掻き消した。

 

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